ミスター・ノーバディ [DVD]
地デジ化以来、テレビのない生活をしています。時々暇つぶしにネットで映画を見ている。日本語字幕でなければコマーシャル無しで一本丸ごと見れるものが何本もネット上に転がっている。
そんな映画のなかで面白過ぎて二回観たうえに細部を確認したくて日本語字幕つきのDVD を思わず買ってしまった。それが今回紹介する[MR.NOBOODY]。定価1280円で発売前に予約したが発売時に値下げされ送料込みで千円ちょっとだった。
この映画、まあ、あり得ない設定だけど、設定1(生まれる前の子供はこれから起こる事を全て知っている。普通は忘却の天使が唇に指をあてて、その事を忘れさすが主人公は天使に指をあてがわれるのを免れた)設定2(未来の世界では今話題のIPS細胞とかES細胞の開発が進み、誰も死なない世界になっていた。主人公は人類で最後に死を迎える人間として世の中の注目の的だった。)
映画はジャーナリストが主人公に彼の人生をインタビューする事を通じて展開してゆく。主人公ニモの話はあらゆる時点での選択がパラレルに思い出される。「あの時別の選択をしたら?」これが映画のなかで観れる訳だ。そして全ての選択がどの選択をした場合にも影響しあっている。
大まかな骨格は離婚した両親のどちらと生きるかという選択に三人の女性とのラブストーリーが複雑に絡んで進んで行く。何度も死んで、生きて。
この映画一見するとなんとも混乱した想像の世界に見えるが実に論理的で現実的な話。そしてこの映画を魅力的にしているのは巧みな編集、随所に散り嵌められた音楽、美しい映像。膨大に存在する選択肢それらを見事に一本の映画にまとめ上げた手腕には正直舌を巻いた。
人生感や哲学には時代の科学が影響を与えて来たがこの映画にはそうした事も盛り込まれている。カオス理論での初期値が微細に変化しただけで結果に大きな違いを生むバタフライ効果、超紐理論による多次元宇宙、物事は全て乱雑な方向へ向かうエントロピー、など。
人は人生の中で様々な選択を迫られます。「あの時、別の道を行ったら、今どうなっていたんだろう?」誰でも一度や二度考えた事がある事だとおもいます。特に311以降、其れ其れの選択、日本が別の選択をしていれば?そもそも私たちに何かを選択したりする事が可能なのか?色々考えさせてくれる映画でした。
☞こちらで観れるよん。